第一章

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「ノライヌ」と俺は名乗っている。 適当に付けた偽名だが、そんなことはどうでもいい。 どうせ誰も気にしない。 偽名だろうがなんだろうがそれが俺であるとわかるならばなんだっていい。 ここは戦争の前は「日本」と呼ばれていた島らしい。 なんでも、ロボット工学や機械工学、やたら高性能な武器とかを造っていたとかで戦争で真っ先に狙われたらしい。 とは言っても消し飛ぶのが1週間早いくらいの違いだったらしいが。 だが、この島には割りと多くの戦前の物が残っている。 日本という国は土地が狭いため、地下にスペースを取ることが多かったらしい。 だから表面の建物が吹っ飛んでも地下施設は比較的被害が少ない、なんてことが少なくなかったとか。 もっとも、大抵の場所は略奪にあうか電子機器がイカれて機能停止しているかで、マトモに機能している施設はほとんど残っていないが。 生き残った人々はグループを作る。 一人で生きていけるような世界ではない。 かつての都市の跡地や、まだ生きている地下施設に人は集まり、生活をしている。 食料に関しては不足は無い。 運がいいのか悪いのか、突然変異により巨大化した動物がそこらを歩き回っている。 それの安全性なんて気にしてられるような身分ではない。 食って今日を生きるか、食わずに飢えて死ぬかの違いだ。誰だって食うことを選ぶだろう。 瓦礫の中から掘り出した過去の遺産に頼って生きる。 これが今の人類の現実だ。
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