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ホオズキで作った提灯を下げ、兄妹は山道を歩いた。おじさんのところまではゆっくり歩いても四日あれば到着するはずだ。
新しいわらじを履かせてもらったミツは、上機嫌で兄の前を行く。対するウリは、せっかくの遠出だというのに気分が浮かない。
「ミツ、今からはりきりすぎると……」
「ねえ、黒い獣って知ってる?」
小言を遮って甲高い声が問いかけた。
「黒い獣?」
「父さんが言ってたんだって。遠くへ行く途中には、黒い大きな獣に会うことがあるのよ。そいつはあたしたちと違って、しゃべったり考えたりしないの。言葉が通じないのよ。だから会ったら逃げるしかないの」
「……だから、そういうのがいるって……」
「あ、ホタル。捕まえて。紐を付ければ道案内になるわ」
言って、ミツは兄の尻をぱんと叩いた。
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