クワガタ

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クワガタ

 しばらく行くと、ふたりの目の前に栗のいがが降ってきた。  喜んで拾おうと屈んだ頭上から声がかかる。 「待ってくれ、それは俺が落としたんだよお」  見上げると、鋭い刃を構えたクワガタが栗の枝に乗っていた。 「すみません。僕たちにもいくつか分けてもらえませんか?」 「いいとも。運ぶのを手伝ってくれるんならなあ」  ふたりはクワガタの家まで何度も往復してたくさんの栗を運んだ。大した仕事ではなかったが、クワガタはとても機嫌を良くして、ふたりが食べきれないほどの栗を落としてくれた。 「旅をするんなら、いがを背中にしょって歩くといいよ。襲われたときに身を守れるからなあ」  別れる際にクワガタはそう言い残して飛び去った。  なるほどと思う兄の横で、ミツはあきれた表情をした。 「何言ってるのかしら。そんなことしたら、はりねずみに間違われちゃうじゃない」  ウリは軽く笑って、妹を説得した。
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