第一章

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年代を感じさせる重厚な扉の内は、外とは打って変わって明るく、あたたかみある色彩にあふれている。 そこかしこから感じる人の気配で、いくらかざわついてもみえた。 とはいってもあきれるほどに広い屋敷の中、人の暮らす空間としては十分な落ち着き様だろう。 玄関ホールに踏み入った彼の目に映るのは、使用人のお仕着せ姿で、小走りにこちらに向かってくるメイド一人だった。 来客か屋敷内の者であるかを問わず、年中慇懃に出迎えを務める老執事の姿は、珍しく見あたらない。 「お帰りなさいませ、マルセイユ様‥‥」 メイドは声をかけても失礼にならない距離まで来ると、彼に向かって不慣れな仕草でお辞儀しかけた。 あまり見ないメイドの姿を頭の隅に書き加え、彼はその言葉の先を柔らかく遮って尋ねる。 「エル‥‥エルリーゼは?  様子を見に来てあげたんだけれどね。  どうしている?」
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