第二章

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誰も何も言わなかったけれども。 あまりにも強大であるが故に封された禁術。 時に理をも外れるために隠された秘術。 許されない行為はしばしば、好奇心旺盛な年代の駆け出し魔術師たちを魅了するちからを持つ。 実際にこの場で禁忌を侵したわけではなくても、思わず声を潜め周りを窺うような態度に出てしまうのは、それがあながちまったくの的外れではないから。 発言したセイラムも、それを聞いていただけのクラスメイトも、もちろんエルリーゼも含めて、皆一度くらいは禁忌に触れることを意識したことがあるのだ。 ‥‥まぁ、優等生のセイラムやレナならばまだしも、エルリーゼ程度ではそんな上位レベルの魔術は、扱える扱えないの前に仕組みを理解できるかも怪しいから、当然使ってみたことなどないのだが。 「さて、ずいぶん和気あいあいと話が弾んでいたところもあるようだけれど、成果の出たところはあるかい?  正解でなくても構わない。  考えた結果を口に出すのも必要な勉強のうちだからね」 発言を促す言葉と、にっこりと浮かべたエセ王子スマイルに、クラス中の空気が緩んだ。 あんなの、自分たち学生を油断させるための罠だ。 ただの方便、マルセイユの手段のひとつに過ぎないと、エルリーゼなどは確信している。
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