第二章

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「キミたち中等部生が、時に高等部の学生も含めて、起こしやすい事故。  それは━━」 しんと静まり返った教室に、いつになく真剣な響きを帯びたマルセイユの声が染み渡った。 「‥‥限界を見誤り、自分の魔力をすべて使い尽くしてしまうことだ。  怒られるで済めばいい、これからがある。  けれども、その失敗が引き起こした事故が、自分の命を落とすというものだったら?  ボクたち教師の説教など、何の価値もなくなってしまう」 事故によって喪われる、好奇心の代償は、自身の命。 ある意味では先ほどセイラムが言った、禁術や秘術に手を出してしまうことと共通するものがある。 沈んだ静けさを纏う教室に向かって、彼はそこで初めて教科書を手に取った。 顔は変わらず学生たちに向けたまま、言葉を続ける。 「キミたちが魔術に用いている魔力の根元は、どこだか知っているね?  そう、キミたち自身の中にある。  目で見ることはできないけれど、自身の内(なか)にある魔力の流れを感じたことのない者は、ここにはいないだろう」 教科書の開いたページの冒頭には、“魔力の根元” という章タイトルが題されている。
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