第二章

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  「この、キミたちの内にある魔力というものは、さらに元を辿れば大地から与えられているんだ。  産まれた時から当たり前にあるから、人間にもともと備わっている力だと勘違いしていた人もいるかもしれないが‥‥。  学院の研究の結果、大陸の外から来た人間にはほとんど備わらないことがわかっている」 大陸の外から来る人間、稀人(まれびと)と呼ばれる人々のことは、あまりよく知られていない。 どういうわけかはわからないが、非常に数が少ないのだ。町に一人もいないなんてことはざらにある。 その稀人たちが蔑視の対象になっていることを、エルリーゼは知ってしまっていた。 「大陸の外から来る人間、“稀人” のことは、また別の機会に説明するけれども。  今日わかってほしいのは、キミたちが当たり前のように魔力を持っているのは、キミたちの住む大地からエネルギーを与えられて産まれてきたからだということだ。  この大陸の地盤に染み込んだ太古のエネルギーが、歳月をかけて大陸に住まう人間の内に取り込まれて、今の魔力というかたちに転化していった、と言われている」 エルリーゼの心のささくれのようなちくりとした痛みが、彼にわかるわけはないのに‥‥ なぜだか、言葉を切ったマルセイユの瞳が、彼女に向けられたような気がした。 ‥‥きっと気のせいだ。彼は表情ひとつ変えなかったんだから。 ただの、考えすぎだ‥‥。
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