第二章

32/36

135人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
  「ところが、この魔力というエネルギーは、いつでも簡単に大地から取り込めるという代物ではないんだ。  母胎の中に生命が宿るとき、キミたちが母親のおなかの中にいたときに、今持っている魔力の内のほとんどを取り込み、蓄えている。  魔術の能力の多寡に先天的な部分の影響が大きいのは、このためだ。  魔力の量の多い少ないはもちろん、魔力の質の良し悪しも、後天的な努力ですべてを補うことはできない」 その事実を、魔術の才能に秀でた者の希有さが如実に表している。 たとえばそう、このマルセイユという希代の才能を備えた男のように。 彼は続けて、目を閉じて、次のようなイメージを頭の中に思い浮かべるようにと指示をした。 水場。 池や沼や、小さな湖のような、自分以外誰も知らない静かな場所。 その内に湛えられた水こそが、魔力。 エルリーゼの脳裏には、なぜか、暗く深く、静かな地底湖のイメージが広がっていた。 導影(どうえい)、いくつかのキーワードを元に、対象者の中に映像的なイメージを喚起する術だ。 この映像は対象者がもともと持つ知識や印象などと結びついてできるものだから、今クラスメイトの脳裏には十人十色のイメージが浮かんでいることだろう。 小さな池や湖のような、一定の空間の中にとどめられた水は、池や湖ができたときの水量に比べて、入ってくる量も出てゆく量もそれほど多くない。 この、できたときの水の量が生まれつき持っている魔力の量ということになる。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加