第二章

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    『先生‥‥じゃあ、魔力は僕らの命、なんですか?』 クラスメイトの内の誰かが教師に質問するのが、どこか遠くの方から聞こえてくるように、意識の片隅を掠めていく。 『うん、いい質問だ。ボクが教えているだけのことはある。  厳密に言えば、命そのものではない。  けれども、さっき説明したように、魔力とは命が生まれるときに宿る力‥‥つまり、命そのものと密接な繋がりがあるんだ』 彼女の “実体の” 目はすでに、導影を用いた説明を終えて、次の説明に入る教師の姿を映している。 実体の耳はちゃんと、教壇の上から投げかけられる言葉を受け止め、理解している。 視界どころか指一本動かせないため確認はできないが、様子から察するにクラスメイトはもうすでに導影の術中にはないのだろう。 なのに。 『魔力は魂に宿るもの、と唱える説もある。たとえ身体に受けた傷が浅く、寿命が尽きていなかったとしても、魂を損なえば ━━ 』 どうして。 勢いづいた流れは舟ごと彼女を荒々しく揺さぶり、舟はがたがたと危なげな音を立てて軋んでいる。 『命を落とす。  命を落とさなかったとしても‥‥これまで通りの人間らしい生活を送ることは、できなくなるだろう』 どうして、戻れないの? どうして、気づいてくれないの? 船縁を必死の思いで、ふるえる手でしがみつくように握りしめながら。 頭にはなぜか、断片的な単語が走馬灯のように浮かんでは消えていく。  湖。     揺れる、  小舟。         夏。    孤児       棄て子      ‥‥ いらない。   ”ルース“        暗い、闇 ━━。
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