第三章

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  放課後、活気の元である学生のあらかた捌けた校舎は、急速に静けさに包まれていこうとしていた。 西日の照らす廊下にはすでに、学生の話し声も他の教師の姿も見受けられない。 空の教室をいくつも横目に通り越して、彼の足音はまっすぐに目的の場所へと続いていく。 彼が足を止めた先には、まださほどには年期を感じさせない ”保健室“ と書かれたプレートがかかっていた。 そこで休む者への礼儀として控えめにノックし、静かにドアを開く。 「あ‥‥先生」 「やあ、ありがとう。レナ。  エルリーゼに付いていてくれたんだね?」 浮かない表情で振り返った少女に、マルセイユはつとめて優しく微笑みかけた。 室内にいくつか並んだベッドの内のひとつにだけ、目隠しのためのカーテンが半ば引かれている。 入口からではそのベッドの傍らの椅子に腰掛ける少女の姿しか見えないが、カーテンの向こうで休んでいる者が誰であるかはわかりきっていた。 レナが浮かない顔をしているのも無理はない。 ベッドに眠るもうひとりの少女 ━━ エルリーゼは、二限の自分の授業の終わり頃に気を失ってからというもの、かれこれ数時間以上目を覚ましていないのだ。
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