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眠るエルリーゼをそっと見守るレナは、彼女が二限終わりに気を失ってからずっと、休み時間のたびにここに来てくれているようだ。
今も、今日の授業が終わり下校時刻を過ぎているにもかかわらず、心配そうな表情を浮かべて彼女の傍に付いてくれている。
余分な話をするのでもなく、かと言って焦って彼女の目を覚まさせようとするのでもなく。
そっと寄り添い見守る優しげな姿は、どこか慈母の性を思わせるものがあった。
エルリーゼにできた数少ない友人のひとりが、彼女を心から友人と慕ってくれていることに、マルセイユは家族として安堵し、感謝した。
実のところ、休み時間の内の数回は保健室に来るクラスメイトもいることはいたのだ。
もちろん、エルリーゼの様子を見るために来ている者がいなかったというわけではないのだろう。
が、保健室に来た女子学生の大半は、エルリーゼの様子を見に来るマルセイユが目当てであり、それらの少女たちは彼を待つ張り込み場所のひとつとして保健室を選んだだけだった。
まさか保健室で、どこが悪いわけでもない健康な少女たちと歓談を始めるわけにもいくまい。
マルセイユはたしかにレディたちとの会話を楽しみはするが、時と場所をわきまえないほど馬鹿ではない。
ただでさえ反目しあう仲の保健医がそれを見たら、即座に追い出しにかかるであろうことは目に見えているし。
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