第三章

8/22

135人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
ほのかな温みに似た彼女のオーラの気配が、かざした手のひらから伝わってくる。 ”気配“ と称するのが感覚的には一番近いように思われるが、正確に表現するならば ”魂と魔力をつなぐもの“ といったところだろうか。 オーラが何であるか、その実態のすべてはまだ明らかにされていない。 実態がなんであれ、現にオーラというものが存在し、魂と魔力の両者と深い関わりがあることは確かだ。 それを持つ人間の状態が色濃く反映されるオーラは、通常では外から窺うことのできない部分をあらわにするため、主に医術などの分野で広く活用されている。 規則正しい息づかい。 呼吸のたび小さく上下する胸。 オーラの表面的な部分にも問題はない。 オーラから本人の状態を把握する方法はいくつかあるが、マルセイユは彼女の状態をより深く知るための方法を採った。 静かに、しずかに。 揺らめく蝋燭の炎、たゆたう水面(みなも)。 それらをイメージさせるオーラの気配を、自身のオーラで直接的に感触(さわ)って確かめる。 より、深く。 あの時彼女に起こったことを見極めるために。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加