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水‥‥。
暗い水面。それはかすかに揺れるばかりで、流れと呼べるほどの流れはない。
ややあって、ぽっかりと開けた洞窟のイメージが流れ込んできた。
地底湖。これが、あの時彼女が視ていた情景に違いない。
岸部も天井も見えない地底湖の真ん中に、ぽつり取り残されたように浮かぶ小さな舟。
舟と呼ぶよりも、池や小さな湖によくある手漕ぎのボートといった方が正しいような体(てい)だ。
手元の小さな明かりだけが光源では、周りの様子を窺おうにも、ほんの手先、足先までしか見えはしない。
自身の魔力の源泉をイメージしたときに、このような光景をイメージする者はめずらしい。
たいていの場合は、もっと明るく一般的な水場をイメージするものだ。
見えないものに仮初めの印象を与えているに過ぎないのだから、どんなイメージをしようとそのこと自体は問題にならない。
どこかに引っかかりをおぼえるような気はしたが、その間に彼女は魔力の水を掬おうとボートの縁から手を伸ばした。
白く際立つ腕は水を掬うというよりも、手を浸すように暗い水をかき分ける。
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