第三章

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  所詮この映像は導影術によって導かれたもの、彼女が倒れる前に視ていたイメージに過ぎない。 それを垣間見ているだけなのだから、当然マルセイユの疑念に応えるわけもなく。 時間にしてせいぜい数分程度の映像は、次の場面へと必然的に移り変わっていく。 自らの能力(ちから)を過信した者の末路が、暗い地底湖に突如闇よりも深い顎を開き、少女の乗る頼りない小舟をその先へと強引に誘おうとする。 結末へと。 流れは彼女を、否彼をも乗せて、抗うことも赦さず動き出す。 ゴウッと空虚で獰猛な音を響き渡らせながら迸り流れゆく濁流は、かたち無き運命というもののすがたにも見えた。 ‥‥きっともう、とうの昔に動き出していたのだろう。 仮初めの一時を留めることができたかに見えたところで、 時計の針は止められようとも運命の歯車を止めることなど、誰にも出来はしないのだ。 エルリーゼにも、マルセイユにも。
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