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初めに出会ったのも‥‥
ちょうどこんな、月の細い夜だった。
* * *
彼は12の誕生日を迎えたばかりの、まだ子どもに過ぎなかった。
けれども、その歳の少年にしては、あまりに早熟だったといえよう。
彼は人の羨む多くのものを、天から、そして両親から、生まれながらにして与えられてきた。
そして、それを遺憾なく発揮できる環境と、惜しみない賞賛を贈られる境遇にあった。
そのため、大人びた余裕を持ち、自らの力量にありすぎるほどの自信を持ち、そしていささか‥‥傲慢でもあった。
生まれは、代々祖国の宮廷に高い位で魔術師を輩出する、一流貴族。
かつ、生まれ持った希代の魔術師たる素質は、歴代の偉大なる魔術師にも、並ぶかに思われる可能性を秘めている。
その素質に一分も背くことない頭脳、誰もに『天使のような』と褒めそやされる容貌を持ち合わせた、“神童” とさえ、称されてきた。
本来ならば10歳から入学するはずの、魔術学院初等部に、8歳で入学。
魔術学院は、学び舎という側面もたしかにあるが、名前から連想できるような ”学校“ とは異なる。
魔術の発展に伴い、国ひとつどころか、大陸全土を席巻するようになった一大組織だ。
魔術の恩恵を受けるすべての人間に、教育を義務付けると謳う魔術学院初等部は、あらゆる地方に分校を建てている。
貴族から一般市民まで広く門戸を開く初等部が、入学年齢として定めているのは10歳。
それを下回る場合には、学業の効率的な習得ができるかどうかを計るため、入学試験を実施している。
彼は8歳を前にして、ふたつの試験で、試験官が絶句するほどの成績を叩き出した。
‥‥年齢幼少のための入学試験と、特進クラス編入のための試験だ。
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