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ブリキの缶をガチャガチャ物色する美里は現在26歳。 大学一年の時に父親がリストラで失業し、諸々の苦労を経験してきたせいか、 職場選びに対する安定志向が強く、必死に就職活動をした結果が、この職場。 何年か前ならば、れっきとした公務員。 勿論、現在は某人気総理大臣の功績?によって、一応は民営化されてはいるけれど、それでもその安定性は揺るぎない。 そんな、理想の職場に入ったのが四年前。 当初は、こんな小さな支局ではなく、郵便配達業務を担う大型の局に勤務をし、 大所帯ゆえに同年代の同僚も多く、仕事にプライベートに充実した日々を過ごしていた。 ところが、概ね一通りの業務がこなせるようになれば、局長が窓口に座って昼の休憩を回す、こんな小さな支局へ移されるのが世の常。 途端に彼女の生活は一変した。 特にプライベートの部分。 局長と彼女を含めて総勢3人の局員は、彼女以外は全員既婚。 単刀直入に言って、 『出会いがない』 それが異動した彼女にとって、新しい勤務地に対する唯一にして最大の不満だった。
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