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ところが、窓口に座ったからといって、直ぐにお客が来るかというと、そういうわけでもない。
なにぶん、この郵便局は駅前にあるといっても、"乗降客の少ない寂れた駅前"という前書きが付いてしまう局。
特に、世間一般の昼休みである正午~1時の時間帯を過ぎれば、あとは夕方まで客足は遠退く。
だから、ネームプレートも入れ換え準備万端の彼女も、直ぐに立ち上がりカウンターの向こう側へ。
書類の記入台に設置されたボールペンの書き具合のチェックをしたり、足りない用紙の補充をしたりと、細々した作業をこなしていく。
(あー、クリスマスかあ)
壁際にあるパンフレットのホルダーでは、子ども向け菓子ギフトの申し込み用紙が、赤や緑の華やかな雰囲気を演出している。
勿論、イラストのサンタクロースは柔らかな笑顔を振り撒き、赤鼻のトナカイが楽しげにソリを引いていた。
「橋詰さん所は、誰か親戚に小さい子は居ないの?」
補充するパンフレットを、カウンター越しに差し出すのは、同僚の棚部。
「うちは、もうそんな歳でもないしねぇ」
と、ヘラヘラ笑う四十路の狐顔は、高校生の兄妹を持つ父親だ。
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