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這いずりながら外へ出ると、草の上についた膝が夜露でじっとりと濡れた。 膝についた草を2、3度手で払い、もっさりとした川べりの草の上を歩く。 シンと鎮まり返った冷たい空気が全身を撫で、素知らぬ顔で通り過ぎて行った。 空もまだ夜の名残を残している。 僕はその、群青とレモン色の混在した空を見上げながらジーンズのジッパーを下ろすと、川に向かって放尿した。 そしてジッパーを上げると、川沿いをブラブラと歩き出した。 朝靄の中に微かに漂う青臭い植物と土の香り。 無意識に深く吸った空気の香りは鼻孔の奥の奥に流れ込み、その微かな風は僕の過去の記憶のページをフワッと捲り上げ、その絵本の様な綺麗な記憶のページに僕はまた、心を奪われる。 朝の新鮮な香り…薄い霧に包まれた光…少し大きめの、赤いジップアップジャンバーを着て笑う君…銀色のペンで書かれた言葉…シンパイシナイデ…… 僕は喉の奥が熱くなるのを感じ、急いで頭を振って記憶を追い出した。 そしてゆっくりと歩きながら段ボールハウスに戻った。
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