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紫色の暖かく湿った風は、打ち捨てられた公園のシーソーを軋ませる。
もう今では誰も来なくなった寂れた公園の、そのシミの様にポツンと存在する遊具。
両側から乗る筈のシーソーのバランスは、かつてそこで遊んだ子供の記憶によって、右側に大きく傾いている。
僕はその片側に真っ直ぐ前を向き座った。
尻の下の、シーソーを弾ませ受け止める為の小さいタイヤがひしゃげるのを感じながら、僕は1人でシーソーを上下に動かす。
それは思った以上に骨の折れる動作だ。
前に付いた鉄製の持ち手を上に持ち上げながら、尻を浮かせて立ち上がり、上まで上げた所で少しづつ力を抜き座席を下げながら膝を曲げ、尻を下まで着ける。
湿った空気のせいで、11月だというのに暑く、2、30回上下させると脇にジットリとした汗を感じたが、僕は止めるつもりはなかった。
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