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指に落ちたその水滴を一方の人差し指で掬って、僕は自分の腕に擦り付けた。 春先の魚の鱗の下の薄い皮膜の様な、青っちろい腕に水の線が一筋。 その上に空から降る新しい水滴が、漁場を逸れた撒き餌の様にパラパラと所為無げに皮膚のそこかしこに吸い込まれていった。 ギー……ギー…… 再び真上を向き直り、僕は痛む腰と膝に耐えながら、シーソーを動かす。 ギー……ギー…… 雨足は次第に強くなり、上を向いた顔面を心地好く濡らす。
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