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「おじさん、何してるの?」
「い、いや、別に、何もしてないよ」
しどろもどろになりながら発した声は自分が思っていた以上に小さくくぐもり平面的で、唇に当たる雨粒と一緒に地面に落下した。
僕は咳払いを1度し、痰を切ってからもう一度言う。
「別に何もしてないよ」
少女、いや、老婆は真っ赤な口紅に縁取られた楕円形を崩すことなく大きく微笑みながら、「あ、そう?」とまた1歩こちらに歩み出た。
もう僕の座っているシーソーから老婆まで5mもない。
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