3人が本棚に入れています
本棚に追加
「奏ちゃん、迎えに来てるよ」
クラスメイトのその一言で、私は机の上に広げられた参考書や教科書を、いきよいよく鞄の中へ詰め込んでいく。
急がなきゃ。
クスクスと笑う声が、あちらこちらから聞こえてくるけれど、そんなことに構っている余裕なんてない。
とにかく、急がなきゃ。
「気をつけてね、奏ちゃん」
「じゃーな、西城」
「うん、また明日」
クラスメイトからの挨拶に応えながら、迎えに来た彼の下へ急ぐ。
と言っても、彼がいるのは教室の出入り口で、急がなくても大丈夫な距離なんだけど。
「待った?」
一応、聞いてみる。
友達と仲良く会話をしていた彼は、にっこりと微笑んで、
「全然、待ってないよ」
と優しく私の頭を撫でた。
彼の手から伝わる温もりが、とても心地良い。
自然と笑みがこぼれるくらいに。
最初のコメントを投稿しよう!