第1章

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「奏ちゃん、迎えに来てるよ」 クラスメイトのその一言で、私は机の上に広げられた参考書や教科書を、いきよいよく鞄の中へ詰め込んでいく。 急がなきゃ。 クスクスと笑う声が、あちらこちらから聞こえてくるけれど、そんなことに構っている余裕なんてない。 とにかく、急がなきゃ。 「気をつけてね、奏ちゃん」 「じゃーな、西城」 「うん、また明日」 クラスメイトからの挨拶に応えながら、迎えに来た彼の下へ急ぐ。 と言っても、彼がいるのは教室の出入り口で、急がなくても大丈夫な距離なんだけど。 「待った?」 一応、聞いてみる。 友達と仲良く会話をしていた彼は、にっこりと微笑んで、 「全然、待ってないよ」 と優しく私の頭を撫でた。 彼の手から伝わる温もりが、とても心地良い。 自然と笑みがこぼれるくらいに。
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