第1章

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「忘れ物は……あるみたいだね」 そう言ってすっと伸びてきた彼の手は、私の頬を掠めていった。 それを追うようにして振り返ると、お弁当が入ったバックを掴む彼の手と、にこにこと笑う麻紀ちゃんがいた。 「ありがとう。いつも悪いね」 「いえいえ、気にしないでください」 あ、また忘れ物をするところだった。 急ぐと何か忘れちゃうんだよね。 「ありがとう、麻紀ちゃん」 「気にしないで、気をつけて帰ってね」 「拓也くんがいるから大丈夫だよ」 「ふふ、そうだね」 優しく微笑む麻紀ちゃんにつられて、私も笑みがこぼれた。 「じゃ、帰ろうか」 「うん!」 差し出された彼の左手をぎゅっと握り締めて、二人で学校を後にした。
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