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「忘れ物は……あるみたいだね」
そう言ってすっと伸びてきた彼の手は、私の頬を掠めていった。
それを追うようにして振り返ると、お弁当が入ったバックを掴む彼の手と、にこにこと笑う麻紀ちゃんがいた。
「ありがとう。いつも悪いね」
「いえいえ、気にしないでください」
あ、また忘れ物をするところだった。
急ぐと何か忘れちゃうんだよね。
「ありがとう、麻紀ちゃん」
「気にしないで、気をつけて帰ってね」
「拓也くんがいるから大丈夫だよ」
「ふふ、そうだね」
優しく微笑む麻紀ちゃんにつられて、私も笑みがこぼれた。
「じゃ、帰ろうか」
「うん!」
差し出された彼の左手をぎゅっと握り締めて、二人で学校を後にした。
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