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『…私、行きます。
先輩と会って、話してきます』
『……ありがとう。
できる事なら空港まで送ってあげたいんだけど、仕事の引き継ぎや打ち合わせがあって、どうしても抜けられないの。
直生は今日、事務所のスタッフと出国するわ。
今、空港へ向かってるはずよ』
『分かりました、駅から、バスで向かいます。
……大嶋さん。
ありがとうございます。
先輩と私を…、向き合わせてくれて。
絶対に、無駄にしません』
『…直生をよろしくね』
『はい!』
大嶋さんとの電話を終えると、私は、着替えたばかりのパジャマを脱ぎ、初デートで着たワンピースを身にまとった。
先輩の目に入った時に、少しでも気づいてもらえる様に。
そして急いで目元と口元に簡単にメイクをした。
時計に目をやると、時刻は3時を回っていて。
…ここから駅までは、30分。
駅から空港までは、高速が混んでいなければ2時間だ。
なんとか間に合いそう。
『お母さん、ごめんなさい。
帰ったらちゃんと話すから…』
心の中でそう呟いて、携帯と財布ポーチが入った鞄を手に私は部屋を後にした。
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