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その言葉に反応する様に顔を上げると、先輩は、まるでふっ切れた様な清々しささえ感じられる表情で、私を見つめていた。
「カメラマンに注意されたよ。
『体だけで、心が入ってない。
表情やポージングをいくら作っても、レンズを通して、分かるんだよ』って…見透かされて。
…プロ失格だなって思った」
「…先輩…」
「その時、気づいた。
自分が思っていた以上に、大切で必要で…失いたくない存在なんだ
って。
仕事に支障が出るくらい気持ちを占めてる、って」
「……」
そう言うと先輩は右手をゆっくりと、私の頬へ近づけて。
あの日。
特進科の校舎で初めて会った時とデジャヴする。
「…触れてもいい?」
「……だめって言っても…、触れるくせに…」
ああ。
また、涙声。
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