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焦りからか、先輩の声のトーンが下がる。
私が言っても説得力がないけれど
…実は、分かりやすい人だ。
「相変わらず隙だらけだ。
…答えないなら、キスするよ」
あっ。
このパターンは…!
経験から学んだのか、私はとっさに、先輩の口元を覆う様に右手を当てた。
「…嫌?」
私の手で少しくぐもって聞こえるけれど、それでも、機嫌が悪いと
すぐに分かった。
「い、嫌とかそういう事じゃなくて、その…」
心の準備というものが…!
気持ちを自覚しているからって、
体はすぐに対応できないよ…。
「…分かった。
じゃあ『続き』を言ってくれたら
それで納得する。
それ以上は求めない」
そう言って、冷静に私を見据えている瞳がかすかに揺れた様な気がした瞬間、私は思った。
一体、何のために、ここまで来たの?と。
「…先輩の事が…、好き…です」
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