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「……違う」
なんだか納得のいっていない表情で、そう呟いた先輩。
けれど、その意図が分からなくて私はきょとんとする。
「……」
……どういう、事?と。
混乱気味の頭で、自問自答する。
シンプルな言葉だからこそ伝わる様に、一生懸命、気持ちを込めて
口にしたのに…反応が『違う』の
三文字って、ひどいよ。
と、芽生える怒りを感じて悶々としていると、先輩の柔らかい声がして。
「…この間の時みたいに、必死な愛也ちゃんの口から聞きたい」
「えっ?」
…もしかして…、デートの日の事かな。
「声も…もっと甘ったるくないと俺には染みないな」
「わっ…」
完全に、気がゆるんでいた右手は先輩にふわっと掴まれて外されたかと思うと、今度は、空いた方の腕がスッと背中に回される。
……あ…。
先輩との距離が、なくなっ…た。
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