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すぐ行動に移せない私に苛立ちを覚えたのか、先輩は、焦れったい口調になっていて。
「あと10分か。
…全然、足りないな」
と、腕時計に目を向けて、呟いた
後。
正面にいる私の後頭部に手を回しながらもう片方の腕では腰を引き寄せ、深く、噛みつく様なキスを何度も落とす。
「…も…、だめ…」
「だめじゃない。
さっきの…聞かせて」
「せ…っぱ…、き…」
「聞こえない」
「…っ…好き…」
吐息の混じった、震えた声でそう言うと、先輩は嬉しそうに笑みを浮かべた。
至近距離で、そんな笑顔を見せる
なんて…卑怯だよ……。
と、見とれている隙があったのはほんの数秒間だけだった。
先輩から絶える事なく与えられる熱と感触によって、頭をまっ白にされてしまい、何も考えられなくなってしまったから。
……もう…、と、ける……。
優しい、王子様の顔をした先輩が時折見せる甘くて狡い悪魔の様な二面性を、もっと見せてほしい。
…私だけに。
そう思った。
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