10 告白

17/26
前へ
/851ページ
次へ
ヴー…。 ヴー…。 まるでタイムリミットを告げる様に、携帯の振動が車内に響く。 「…時間だ」 ポケットから、携帯を取り出した先輩は画面を確認して、はあ…と小さくため息をついた。 たぶん、サブマネージャーからの着信だ。 「…じゃあ、行ってくる」 「…はい」 そう言って、まだ火照った自分の体を実感しながら、私は少しだけはにかんで頷いた。 寂しいと思う気持ちは、もちろんあるけれど…先輩は貴重な時間を私と想いを伝え合う事、触れ合う事に注いでくれたから。 安心して…見送る事ができる。 『頑張って』って。 「見送りは、ここでいいよ」 後部座席を降りた先輩の後に続く私に向かい合い、ふわっと笑う。 …そっか。 今や、先輩は人気ファッション誌の表紙を飾る、有名モデル。 周りから、反対されていないとはいえ…公共の場に二人で出歩いたりする事は、まだ、控えるべき。 ただ、そうは言わない思いやりと優しさが先輩らしくて、私は自然と、抱きしめたくなった。 「…たぶん、同じ事考えてる」
/851ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6299人が本棚に入れています
本棚に追加