6299人が本棚に入れています
本棚に追加
『……残念だな。
俺の気持ち、伝わってなかったんだ』
そう言いながら、先輩は、小さくため息を吐いて。
『俺はいつでも…、本気だよ。
さっきだってあんなキスだけじゃ全然、足りなかった。
愛也ちゃんを俺でいっぱいにしたくて、たまらなかった…』
『……』
切なげな声から、放たれた言葉がじわっと胸に染み渡る。
ああ…今、電話な事がこんなにももどかしい。
『…やっぱり分かってない。
私の方がもっとそう思ってます』
口にして、自分で驚く。
いつもなら恥ずかしくて言えない言葉が溢れてくる。
先輩だから。
大好きだから。
『そうだね。
まだまだ、分かってなかった。
じゃあ…帰国したら、全部教えてね』
『……気が向いたら』
『ハハ。
言う様になったね』
『だ、って…。
いつもは先輩に負かされてばかりだから…、たまには私に勝たせてください』
いつの間にか二人して笑い合っていて。
心の中で、やっぱり先輩には勝てないな…と思った。
最初のコメントを投稿しよう!