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こんなタイミングで。
まさかこんなサプライズを準備してくれていたなんて。
『……嬉しくて』
と、口にしたいのに。
素直な気持ちを伝えたいのに。
会話の途中でそっと差し出された、有名なジュエリーメーカーの物である事を示す、シルバーの小さな箱を目にした瞬間。
私は心が震えるほど感動してしまって。
目頭にかすかな熱さを覚えるのと同時に、
感情は体の中を駆け上がって。
ぼろぼろと、視界がぼやけてしまうくらい溢れる涙を指先でぬぐおうとしていると。
「愛也」
ぽつり、と私の名前を呼ぶ声が耳に届く。
「……はい」
「開けてみて」
「……はい」
まだ濡れている頬の涙はそのままに、私は先輩の手のひらで控えめに光るシルバーの箱をそっと手にする。
「……」
確認なんてしなくても、これは先輩からのプレゼントだと分かっているけれど。
私の指先は無意識に緊張しているせいか、箱に触れただけでなかなか開けられない。
「……緊張する?」
「……ごめんなさい。
すごくすごく嬉しいのに、なんだか……」
先輩は、私を喜ばせようとしてくれているのに。
「大丈夫。
俺は愛也の何倍も緊張してるから。
……って、フォローにならないか」
「……」
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