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飲み干した缶コーヒーを缶専用のゴミ箱に投げ入れる。
さてどうしたものか…
結構のんびりとしたつもりだったが昼休みはまだ20分弱はある。
しかしここに居ても特にあれは無いため、また目的地が無いまま校内探索へ。
俺は進路指導室や資料室、面談室や保健室とまだ行ったことが無い所を巡り。
職員室前まで来たところである光景が目に入った。
「うわ…何だありゃ」
何かの資料なのか一冊が分厚い本を山のように抱え、ふらふらと蛇行歩行している女子生徒が前を歩いていたのだ。
右に左に、左に右にとふらふら。
あれはとても一人で持てる量じゃないなっ。
俺は小走りで前を歩く女子生徒に近寄り、声を掛けようとした。
そこで初めて気付く。
肩辺りまで伸びた茶が混じった黒髪。
前髪は顔がはっきりと見えるように両側に分け、それぞれに赤いヘアピンが付けられている。
「ちくしょー…こんなか弱い乙女にこんなに持たせるなんてよー」
そしてあの男勝りの言葉遣い。間違いない!
「桜~!」
後ろから声をかけてみると。
「ん?」
と振り返って仏頂面のままこちらを見る。
「……………おっ悠汰!」
「やっぱ桜だったかっ。それ半分持ってやるよ」
「マジで?ありがたや~…っと」
俺は桜の抱えているぶ厚い本を上から半分ちょっと取ってやる。
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