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じっと見つめてくる新人の娘。
歳は俺よりも若そうで、三十路前ってとこか?
目は大きく鼻筋も通っていて口も大きい、美人という言葉がしっくり来る彼女は俺から視線を逸らさないのだが、何故か思案顔。
それに気付いたミキが新人の娘に話し掛けた。
「ちょっとレイちゃん、お客さんの顔をそんなにガン見したらダメじゃない」
苦笑いを浮かべるミキは確か今年で26だったか?とにかく話し掛けた感じだと同い年位みたいだ。
上下関係を厳しく教えられて来た俺は、年齢について考えていたのだが、唐突な一言で自分の世界から現実に引き戻された。
「リョーちん」
「ヘ?」
俺はさぞマヌケな声を出していたと思う。
リョーちん、それは俺が小学生だった頃のあだ名。まさか20年近く前の呼び名をこんな場所で聞くことになるとは、それも久し振りに来たラウンジで。
「レイちゃん、岡崎さんのことを知ってるの?」
「俺も聞きたい。アンタには悪いんだけど、顔を見ても全く思い出せないんだ。アンタみたいな美人なら覚えててもおかしくないんだけどなぁ」
「ふふふ、リョーちんからそんな言葉を聞けるなんてね。けど、無理もないかも、私めちゃくちゃ太ってたから。山口麗香、覚えてない?」
「山口…レイカ……え、山口麗香?嘘ぉ!?」
思い出すのは未だ幼い小学生の頃。
当時ひょろひょろだった俺の倍のサイズはあった巨漢山口麗香。そのデカさから当時流行っていたアニメの登場人物である"山の不動"をもじって"不動"さんと呼んでいた。
それを思い出してから、俺は開口一番こう言った。
「あの時はゴメンナサイ……」
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