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「わたしね~、結婚してるの~」 恋バナで一通り盛り上がり、ミキが化粧直しに席を立った後の間を見計らったように、フドーさんはそう言った。 それは自慢してるようではなく、寂しさを紛らわすような話し方。 見た目の綺麗さもあるが、話していて知性も感じさせられ結婚していたことには驚きはない。 「そうなんだー、オメデト」 とりあえずは片言の祝辞、話す雰囲気は全く目出度くなさそうだから。 で、案の定目出度くないエピソードが語られる、それも中々ヘビーな。 「アリガト。でもねー、冷め切ってるんだー。わたしね~今痩せてるでしょ?何でだと思う?」 「……旦那さんに出会って一目惚れ、で…ダイエット?」 なんかありきたりだけどそれしか思い浮かばない。 「ブッブー、リョーちん発想が貧弱だよー。正解は…… 借金地獄でした~、アハハハハ!」 爆笑する山口麗香、俺の酔いがトーンダウンした。 「それは、その先を訊いてもいいのか?」 俺は至極真面目に問い掛けた。ただの冗談なのか笑い話にしようとしているのか、それは分からないが俺にとってそれは笑い話じゃなかった。 「あれれ?本気にしてくれたの?さっすがリョーちん!真面目ぇ~」 尚も笑い続ける山口麗香、やっぱり冗談だったのか? そう思い肩の力を抜いた時に山口麗香の笑いも止まった。 「リョーちん……聞いてくれる?」 山口麗香の瞳にうっすらと光るものが溜まっていた。
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