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「お?来たな」
成田病院の診察室の明かりが消えたのを確かめて、わたしはセンセのいる部屋の窓を叩いた。
開いた瞬間にセンセの意地悪な顔が覗いた。
「そろそろ来るだろうなと思ってたよ」
「うん、来ちゃった」
「中に入れば?」
「うん。ありがとう」
センセは裏口を開けてくれてた。
センセの勉強する机の隣に椅子が置いてありそこに腰かけ踞る。
「泣いていいぞ」
センセは机に向かって顔も上げずに言った。
「そこで泣くのが辛いなら、今だけ胸を貸してやってもいいぜ」
医学書を捲りながら、わたしに気を遣わせないようにそう言った。
「……ありがと」
でも、あんまり優しくしないでよ。
優しくされるとますます泣けてくるから。
「ひっく」
達也。入学した時に初めて話したのが達也だったんだよ。
消しゴム貸してくれって気さくに話かけて来てくれて、それからのずっと一緒のお隣さん。
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