フラれて行く先は。

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顔を上げると、噴水の中に裸足で入ってる男のひとが腕捲りしてる。 ―――あ。 センセ…。 近所の成田病院のお医者さんだった。 あまり有名ではないけど、近所のよしみで家族ぐるみで仲良くさせてもらっている。 「…冷たい」 「夏も近くなったし、気持ちいいだろ?」 「………」 ニッ。 成田センセはちょっと意地悪に笑った。 顔に水飛沫を掛けられたそのおかげで堂々と顔を拭くことが出来た。 「…センセ。いじわる」 ちょっと睨むとセンセは首を竦めて見せた。 「夏になってきたし涼みには丁度いいだろ?」 「まだ、水は冷たいんですけど」 「ははは。愛嬌、愛嬌!」 成田センセは腕捲りした手でシャツを掴み、そのシャツの端でわたしの顔を拭いた。 「水も滴るいい女じゃん」 「それを言うなら、水も滴るいい男でしょ」 「どっちでもいいじゃんか」 そして、軽くわたしの耳元に口を寄せた。 「こいつ、ぽぽが好きなヤツか」
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