ひとりぼっちの唄

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一度死んでみてわかったが どうやら僕は死なないらしい 一回目は事故死 完全に心臓が止まって 死亡宣告されて その24時間後には生き返っていた 葬式の準備がされていて なんとも気まずくなった 二回目は他殺 家に入った強盗に 包丁で刺されて死んだ 強盗は家に立てこもり 僕の母を人質にしている間に 僕が生き返って羽交い締め 三回目は臓器提供 脳死となった僕から たくさんの臓器が提供されて死んだ 今度生き返ったのは 葬式の真っ最中 坊主は気にせず経を唱えた 何回死んだかわからないが これが最後となるかもしれない 最後の死に方は老衰 たくさんの孫に囲まれて 幸せに息を引き取った 孫の泣き顔を見ながら 僕は生き返ってしまう これで最後にしてほしい 最後の死に方は自殺 高層ビルの屋上から飛び降りて 僕の体は四散した その肉片はホルマリンに漬けられ 翌日には僕となった とうとう世界の最後の日 誰より生きたこの僕は とうとう最後まで生きてしまった 死なない 死ねない 死にたい 世界が息を引き取ったそのとき 僕も同時に死にながら 死にながら生き返った 世界一長生きなこの僕の 世界より長生きなこの僕の 最後の死に方をやっと見つけた ああ、そうか、そうか 確かに今まで一度もない 常に何かと共にある 孤独なんて一度もなかった 僕は孤独に死んでいった
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