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この街の風景の、そこかしこに君がいる。
文房具屋の角の赤いポスト。
青と白の日除けが降りた洋菓子店。
笑っていたかと思えば、
傘をさして1人俯いている。
記憶の中の君。
この坂を下りたところにある小さな本屋で、よく待ち合わせをした。
4年前、僕たちは高校生だった。
疑うことも知らないで、ただ何かを信じていた。
優しいだけじゃ駄目なんだって、知るにはまだ幼くて、
ましてや、厳しさを言い表す術なんて持ち得なかった。
涙は風が運んでいった。
あの日から僕の時間は人よりゆっくり動いているような、そんな気がするんだ。
今年も桜が咲いている。
本屋の向かいに小さな水路が流れている。
その先の堤の上に青いビニールシートが陣取っている。
4年前の今日、やはり桜は咲いていた。
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