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『皆、行くぞ。必ず、俺達で終わらせるんだ!』
少しばかり時代から外れた壁掛けの液晶テレビの向こう、少年は現代の滑らかなホログラフィーに比べ幾分か粗いクオリティで映し出されるヒーロー達の活躍を眺めていた。
硬いフローリングの上、体を縮込ませる様に体育館座りをしてひたすらその眩しい姿を見詰め続ける。
『正義の名の許に、いざ――ッ!!』
雄々しい大音声を耳にし、少年はピクリと反応を示した。
胡乱に画面を見詰めていた瞳に、焦点が点る。
「……正義、か」
吐き出すような呟きは、画面の向こうのヒーロー達とは打って代わり、陰りを帯びていた。
「俺は、どうしたらいいんだろうな……」
少年は、答えを求める。
幼い頃の憧憬の欠片を、その胸に抱いて。
「どうすれば……」
憧憬を砕かれても、尚、僅かに胸を躍らせる虚しい活劇を観戦しながら、少年は自問を繰り返す。
――少年は、未だ何も知らない。
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