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空気を震わせ響く銃声。
大地を揺らし轟く爆音。
「あ、やべ! グリーン、そっち頼む!!」
銃弾やら魔法やらが飛び交う混戦の最中。緑川葉月は己へと向けられた声に釣られ、声の主がいるであろう方向へと視線を向けた。
「うおお――ッ!」
すると、声の主と葉月とを結ぶ一直線上の間に、雄叫びと共に大上段から斬りかかってくる者がいた。
野太い声色と、全身を包む純白のタイツ越しに浮き上がる筋骨粒々とした体格からして、性別は男だろうか。
葉月は、男が装着している巨大な流線型をした不格好なマスク越しに視線をかち合わせた次の瞬間、右手に持つ片手直剣を閃かせた。
「……っ!」
息を詰めて集中をし、何とか相手の得物であるカトラスの鈍く光る剣身を滑らせるようにして受け流すことに成功した。
軌道を変えられたカトラスが本来の標的を逸れる。僅かに反った刃が勢いのままに砂でざらついた煉瓦に衝突するのを視界の片隅に収めながら、葉月は片手直剣を持つ右手はそのままに、左手を引いて体へと寄せる。
左手に持つ白銀のレイピアを水平に構え、引き絞るようにして狙いを定めてから男へ向けて放った。
美しい銀色の光が、葉月と男の間を瞬時にして駆け抜ける。
葉月の左腕に嫌な感覚が伝わり、同時に、苦悶に満ちた呻きが耳に届いた。
「がぁ……っ! こ、のガキが……」
己の右肩に突き刺さった剣身を見ているのだろうか。男は首をぐるりと捻り、巨大なマスクごと右肩へと視線を向けている。
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