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「‥‥‥私、置いていかれたのね‥‥‥」
「‥‥‥それは違うよ。君は、置いていかれたわけじゃない。ただはじかれただけだ」
呆然としながらつぶやいた私に、思わぬ強い声が返ってきた。
声の主はクロスだった。
彼は、芝生の上に座り込んでいる私に向かって、そっと手を伸ばしてくる。
「だから‥‥‥泣かないで」
彼は困ったような顔で笑いながら、私の頬を優しく拭う。
彼に指摘されて初めて、私は自分が泣いていることに気がついた。
「ご、ごめんなさいっ、困らせてしまって‥‥‥」
「あぁ!ダメだよそんなにこすったら!‥‥‥ほら、赤くなってる」
彼をこれ以上困らせまいと思い、頬を濡らす水滴をゴシゴシと拭う。
乱暴な仕草でこする私に、慌ててクロスが止めに入る。
そして、少し赤くなった目をみて顔をしかめ、いきなり私のまぶたに口づけてきた。
「く、ククククッ、クロス!?」
『はぁ‥‥‥いきなり何してんのよあんた』
咄嗟の事に一瞬唖然とするがすぐに我に返り、真っ赤になってクロスの顔を見つめる。
そんな私を見て今まで黙っていたバラが、ため息をついている。
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