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「は、はい。今日からお世話になります丹良楽です。宜しくお願いします。」
「ふふ。いい子そうで良かったです。これで礼儀知らずのお坊ちゃんとかでしたら追い出そうと思ってましたがこれなら安心ですね。」
僕が慌てて挨拶すると満足そうにそう言われた。
此れくらい普通じゃないのかと思った僕だけど、元天草の人達はお金持ちだから傲慢な人達が多いのかもしれないなと納得した。
立ち話も何だろうと二人を部屋に招こうとしたのだが、逆に二人の部屋の方に招かれてしまった。
いや、久瀬とあんまり良い関係とは言えない僕としては大変有難いんだけど。
「何か飲みますか?」
今だにぶつぶつ言っている不気味な男の人をスルーして引き摺りながら連れて来た男の人はニコニコしながらそう聞いてきた。
この人まだ会って間もないけど、優しげな顔しときながら結構腹黒そうだ。
「いえ、お構いなく。」
そんなに長居するつもりがなかった僕はすぐに断った。
すると少し残念そうな顔をしながら向かい側のソファーに座って自己紹介をしてくれた。
「私は君の部屋から向かい側に住んでます、涼風神影<スズカゼミカゲ>と申します。其方の隅でいじけていますのは関内清<セキウチ キヨ>で私の同室者です。」
そう、この人達は僕の所と同じドアの作りをしている向かい側に住んでいる人達だったのだ。
「僕は今日入寮したばかりの丹良楽です。改めて宜しくお願いします。」
「いえいえ、此方こそ宜しくお願い致しますね。私達は久瀬とは長年の付き合いでして、大抵この三人で行動したりしています。」
自分も名乗り直した方がいいだろうと思いそう言うと涼風さんは僕にとってある意味死刑宣告のような事をさらっと告げた。
それじゃあ僕二人と友達になれないんじゃ……。
久瀬に嫌われてるし……。
「もしかして、久瀬に嫌われましたか?大丈夫ですよ。あいつは自分が認めた人以外には大概冷たいんで、初対面の人に当たりが強いんです。それに、君の場合身体の線が細いのも要因でしょう。他の人よりは時間が掛かるかもしれませんが、ゆっくりと距離を詰めていけば自然と仲良くなれますから心配は無用ですよ。多少性格難ですが、久瀬の場合其処まで気難しいわけではないのですから。」
僕が暗い顔をしているのに気付いたのか涼風さんは安心させるように微笑みながらそう言ってくれた。
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