伊藤秀樹

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屋上に出ると、先程のやりとりが行われていた手摺に、もたれ掛かっている女がいた。 顔がよくわからない。視力が悪いのは本当に損だな。 もう少し近づいてみるか。俺はなにくわぬ顔で近づいた。 俺の存在に気がついているハズなのに俺の方を全然見ようともしない。 なんだこいつはと思ったが、顔が把握できる距離まで来た時、俺は驚いた。 「こ、小森美咲…」 じゃあさっきのヤツが彼氏だったのか?いやそんなバカな。 「いきなりなに?てかあなた誰なの?」 小森は冷たい口調で言った。まさに警戒しているという感じだ。 「ああ悪いな。俺は二組の伊藤秀樹っていうんだ。話すのは初めてだよな?」 俺はなるべく優しく、やんわりとした口調で言った。 「ふーん。別に名前なんてどうでもいい。それよりこの学校には、格好いい男は一人もいないの? 言い寄ってくる男といえば、さっきみたいなガリ勉ばっかり。もううんざり」 噂以上だな。いやそれ以上だ。これならたしかに同性には嫌われるわけだ。 「さあ。俺にはなんとも。進学科にはいないの?」 小森は艶のある長い髪をいじりながら言った。
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