中西時美(18)

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時美が卒業式と合格した市内の私立大学の入学を蹴っ飛ばして家出同然に仙台から東京へ出て来たのは、周りのものが持つような、都会に対する羨望とか特別な憧れなどではなく、探検家がもつような未知の世界に対する願望によるものが大きい。 その街は人やビルの数だけ広大で荒涼としてて、生まれ育った街とは違う、想像もつかないような現実、ーつまり彼女の思うところの現実と非現実の狭間にある東京というある種特別な世界があるはずだ。まだ見ぬそれが見たかった。 希望など持ってないけど、願望ならある。一旗あげて故郷に錦飾れるならばそれもいいかもしれない。でも、そんなものに期待してはいない。 彼女は、彼女の想像の先にある世界を確かめたかった。 長々と書いたが、つまり、何が言いたいかと言うと、中西時美は、ほとんど旅行気分程度の覚悟しかなかったのですよ。
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