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肌寒さを感じて、僕は目を覚ました。
そこは森の中。僕は少女の膝の上だった。
「気分はどうだ?」
夕焼け空の中に一番星を確認できた。もうこんな時間か。
「その様子じゃあ、ちゃっかり成功しちゃったみたいだな――流石、私」
心はひどく穏やかだった。痛みも恐怖心も、次第に和らいでいくのを感じるほどに。
「一応あんたにも訊いてやるが、名前は何が良いと思う?」
「……」
「黙ってちゃあ分からんだろ。言わなくても理解できる方法はまだ習得してないんだ」
何の話をしているのか、僕には理解できなかった。
ただ新しい遊びを見つけた子供のような笑みを浮かべて、彼女は語り続ける。
「まぁあいいや。dream within a dream(夢見る夢)。取り敢えずはそう名付けておくよ」
どうぞお好きに。その一言に尽きる。何があったかは知らないが、良かったな。
そして彼女は空を眺めた。僕の見ている星でも眺めているのかもしれない。
「そろそろかな。最後に名前くらいは勝手に名乗らせてもらうよ。私は普通の――――、―――――だぜ!」
そこから先は途切れ途切れにしか覚えていない。
ただ彼女の去り際の一言が「じゃあな」だったことだけは覚えている。
こんな森の中で独りになるのは寂しいものだな。
何処かでカラスが鳴いている。僕もかえることにしよう。
まだ陽は沈んではいない――はず。
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