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正座したわたしの臀の割れ目から、彼の放った精が粘るようにあふれ、畳みの床に流れ落ちた。
あ――
実際に目にしたわけではないが、たしかにそれを感じた。
ちょっとだけ寂しい気がした。
けれど、淡々とした気持ちのほうが大きい。
さよならの合図だと思った。
わたしは立ちあがった。
馴れない正座をしていたせいで、すこし足が痺れていたけれど、うまく立ちあがれた。
それから見せつけるようにして黒のショーツを穿き、胸を張るようにブラジャーのホックを締めた。
わたしはスタイルには多少の自信がある。
揺れるように踊るわたしと、畳みのうえに落ちたキャミソールを、男が交互に視線をはしらせた。
お前は綺麗だ――
わたしは肩をすくめた。
男が褒める言葉に実体がないのは昔から知っていた。
実がない、ということだ。
それよりは貶されるか、首を絞められるほうが、少しだけましだと思う。
実が、あるからだ。
少なくとも、わたしにとっては。
そんな自分をちょっとだけ可哀そうな女だと思った。
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