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誰とやったんだ、お前――
丸まったひじきを、右手人差し指と親指で摘まみあげ、探るような目つきで男に詰め寄られた。
思わずそらしたくなるような、尖った視線だった。
それなのに裸に真っ白な靴下を足首に絡ませているという、どこか間の抜けた男の姿である。
その男の姿容が奇妙な哀れさを誘い、ふーん、という感じだ。
わたしといえば、脚を拡げられていわゆるM字開脚という、あられもない姿である。
男はわたしの内腿をがっちりと押さえこんで、わたしの茂みを覗きこんで、いや血走った目で凝視して揺るぎがない。
抱きあっているときは気にならないのに、険悪な雰囲気のときに熱が醒めて俯瞰するあれこれは、なんとも情けなさが際立つものだ。
わたしはそれまで昂っていた気持ちが急激に萎えてしまい、口を窄めて中空に視線をなげている。
思うに、ちょっとしたあひる口のような形に唇がゆがんでいるのではないか。
つまりわたしは不服である。
しかも、ひじき野郎、と御丁寧に罵倒された。
絶句、というには大げさだが、わたしはたしかに言葉を失った。
野郎ってなんだ。私は女だ。
しかも、ひじきって。
こういうのを、すれ違いというのだろうか。
微妙にニュアンスが違う気もするが、すれ違いという語句が脳裏を掠めた瞬間、わたしは居たたまれない感情に襲われたのであった。
悲しい気分でわたしはそれを凝視した。
それはたしかに、ひじきだった。
トイレットペーパーの小さき残骸とでもいうべき、白いひじきであった。
男から奪いとる勢いで白いひじきを摘まみあげ、感触をたしかめた。
微妙につかみどころがなく、そのくせ強固に姿を保持していて、だからこそというか居たたまれない気配がある。
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