<ひじきな女>

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溜息を抑えつつ、わたしは首をかしげた。 いつからそれが付着していたのだろう。 それで思いだしたのだが、ついさっき、トイレでおしっこをしたときだと気づいた。 ウォシュレットがついていないので、用を足したときはどうしてもトイレットペーパーに頼らざるをえない。 だけど、これはいちいち男に説明することなのだろうか。 わたしは指先の白いひじきから、男の顔に視線をもどした。 まるで不潔なものを見た、とでもいうような表情で、眉間と鼻梁に皺を寄せている。 たとえば冗談にしてまぎらわせてやろうという優しさの欠片もない真剣さである。 ひどい・・・ 心の隅に小さな亀裂がはしる音をきいた気がした。 わたしはこの男に一生ひじき野郎と揶揄されかねない危惧を覚えていた。 しかもそれはわたしの不浄からきているという、いわれのない起点から派生しているものだ。 もし、それが垢にまみれて黒っぽくなっているなら、たしかに話しは別だ。 しかし私は毎日きちんとお風呂を浴びている。 そこを毎夜、清めている。ときどき、さりげなく自慰もする。 見られても恥ずかしくないように、念入りに指先を用いて擦り、磨いている。 磨いている、といったら変だけど、それぐらいの気持ちで清廉には配慮しているのだ。 すべてはあなたのため、といったら大げさで可笑しいけれど、少しはホンネの気持ちがまじっている。 どちらかというと漢字の本音、ではなく、片仮名のホンネなのだけれど。
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