58人が本棚に入れています
本棚に追加
それなのに男はわたしに襲いかかり、無理遣りのしかかると、首を絞めてきた。
しかも私の脚を断ち割って、強引に押しこんできた。
抵抗しても男の力には敵わない。
わたしは身をまかせ、蛙のような体勢で組みしかれ、目じりに涙を滲ませて、口を半開きにして喘いでいる。
鬱血、というのだろうか。
空気を内側から充満させ、張り詰めていく感じがする。
血の気を失い、そろそろ気でも遠くなろうかとしたときだ。
なにを思ったか、男はわたしの半開きの口に唾をおとしこんできた。
舌のうえで嫌らしく泡立つ唾の感触に微妙なものを感じた。不快に近いかもしれない。
首を圧迫している力がわずかに緩んだ。
飲め、ということだろう。
意を介したわたしは、男の垂らした唾を飲み干した。
このあたりの呼吸は、なかなかのものだと我ながら思う。
男が満足そうに口の端を歪めた。
最初のコメントを投稿しよう!