2人が本棚に入れています
本棚に追加
人は、叫び声を聞くと無意識のうちに確認しようとする。
叫び声を引き起こしたものが何なのか、それがどんな状態であるのか、知りたいと思うし、その音が自分にどんな信号を発しているのかを確認しようとする。
全ては条件反射で行われる。
叫び声を聞いて、その声のする方を振り向かずにいられるわけがないのだ。
しかし、薫は自分の体が動かないことを悟る。金縛りにあったかのように自分の体が動かない。
背後では確実に何かが起こっている。
何か良くないことが起こっているのは間違いない。
ひょっとしたらコンビニ強盗かもしれない。
薫は状況を把握しようと焦った。ただ、ひょいと首を動かすだけでいいのに、頑として薫は漫画を読み続けているのだ。
自分の意志とはうらはらに。
少しだけ時間は戻る。男はうつろな表情を浮かべたまま、レジを乗り越えて女の胸首を掴むと強引に自分に引き寄せ顔を近づける。
男の口から聞き取れない低い声が漏れている。
つぶやきに色が見えたとしたら、まがまがしい黒だろう。
『ぶつぶつ。・・・・お前、俺を馬鹿にしただろ。おまえ・・』
店員は思いきり叫ぶ。
『きゃああー、やめて!』
そして、そこで金縛りは起こる。この可哀想な店員も。
最初のコメントを投稿しよう!